院長あいさつ

院長あいさつ

「日常」は「非日常」の集合?!

世界中で広がった新型コロナウイルス感染症。富山大学では感染防止対策として2020年4月、急遽Webシステムを用いた遠隔授業を開始しました。新入生の履修登録はどうするのか?全員が受信できる機器を持っているのか?課題が次々と表面化する中で、待ったなしの対応が求められました。

新型コロナウイルス感染症は、誰も予想していなかったことですが、世の中では非日常的な事態がしばしば起こります。台風や地震による自然災害は毎年のように発生しますし、世界が密接に関係づいた今日、何処かの国の大統領の言動により富山での材料価格が高騰したり、制度が変更されて製品が輸出できなくなったりする事態も起こります。普通に行ってきたことが、突然立ち行かなくなる、私たちの日常は、そのような非日常が集合している中で、なんとか維持しているのです。

未知への「対応力」を育む

人間社会は、ゆったりとした速度で進歩してきました。親から子、子から孫へと生活に必要な知識や技術が継承されてきたのです。しかし、産業革命後から進化は急激に早まり、インターネットの普及などに伴う情報革命が起きると更に加速しました。災害に対処するだけでなく、あらゆる場面で経験したことのない「未知」への対応が求められています。

そのためには「既知」を鵜呑みにするのではなく、なぜそのような理論が生まれたのか、その背景や構築のプロセスを理解することが重要になります。教員の講義を聴くだけでなく、それをひとつの手がかりとして、自ら考えて講義内容を深く理解することが求められます。また、他者の考えを知り、自分の考えと照らし合わせて最適解を導き出すコミュニケーション能力も重要になります。

「多様性」の中で学び、世界を広げる!

富山大学の教養教育では2年次以降の学部専門教育をより実りあるものにするために、富大生として共通に身につけておくべき基礎能力の育成を目指しています。中でもこれからの「Society 5.0*」と呼ばれる社会に対応し、英語力、データサイエンス力の向上に力を入れるとともに、アクティブラーニング型の授業を推進していきます。

本学は、人文社会芸術系から医薬理工系まで9つの学部で構成された総合大学です。全国的に希少な都市デザインや芸術を学ぶ学生を含め、1年次は全ての学生が五福キャンパスで学びます。異なる学部生がグループをつくり、地域の課題解決を行うPBL(Project 又はProblem Based Learning)型授業も行っています。「多様性(ダイバーシティ)」は、国連の提唱する「SDGs(Sustainable Development Goals;持続可能な開発目標)」においても重要なキーワードとなっていますが、さまざまな学生の考えに触れることは、コミュニケーション能力を高めることにつながるでしょう。出身や目指す専門などが異なることを「おもしろい」と捉えて、多様性の中で未知への対応力を鍛えて欲しいと願っています。

*「Society 5.0」とは狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。出典:内閣府Web Page

教養教育院長
 武山 良三